【新話】

2009/11/14 錬金家族。
マヨネーズが切れてたんだったわ…。

お母さんは、そこら辺にあった、
眼鏡とはちみつを錬金して、マヨネーズを作った。

結構しんどかったけど、まぁしょうがない。


おじいちゃんが尋ねてくる。

「そこに置いてあった老眼鏡知らんかね?」


あぁあ、お母さんが錬金で使っちゃった…。

なので、おじいちゃんは、
そこら辺にあったスカーフとピンセットを錬金して、
老眼鏡を作った。
デザインは気に入らないけど…しょうがない。


お姉ちゃんが尋ねる。

「ねぇ、このソファーに掛けてたスカーフ知らない?」


あぁ、おじいちゃんが錬金に使っちゃった。


ぶぅぶぅ良いながら、お姉ちゃんは、
ハンドクリームとサポテンを錬金して、
スカーフを作った。
ちょっとチクチクするけど仕方がない。



おばあちゃんがやってくる。

「なぁ、ハンドクリーム知らんかね?」


あぁ、おねえちゃんが…



おばあちゃん、ふぅとため息をついて、
僕のミニカーと、おじいちゃんを錬金して、
ハンドクリームを作った。
ちょっと線香臭いけど、しょうがない。



もぉ!!僕のミニカー!!!



僕は靴べらと、クレヨンを錬金して、
ミニカーを作った。
意外とカッコイイのが出きた。



錬金術は便利っちゃ便利だが、
こういうことにもなってしまう。



おじいちゃんはどこ行った?




パンにお母さんが使った、
残りのはちみつを塗って食べた。
お父さんの香りがした。



あれ?おとうさんは?



END

2009/11/14 好き嫌い。
お母さんがせっかく作ったカレーライス。

みつはる君は、にんじんを残してしまいました。



お母さんは言います。



「みっちゃん、またにんじん残したの?」


みつはる君は黙ったまま。


「いい?みっちゃん。にんじんさん食べないと、

にんじんさんのお化けが出て、

みっちゃん食べられちゃうわよ?」



みつはる君はお母さんの顔を見て、



『怖いよぉ…』



と泣きそうになりました。



おかあさんはすぐさま、


「大丈夫。ちゃんと食べたら、

にんじんお化けは出てこないから!」



おかあさんはみつはる君の頭をなでなで。



それを振り払い、みつはる君…




『そうじゃなくて…』




「言い訳するんじゃないのぉ!」




『にんじんは、たべるけど…』




「…けど?」




『どうしてお母さん、さっきから男の人おぶってるの?』




END



2009/11/14 駄菓子屋。
古い駄菓子屋さんを見つけて、
懐かしく思い、ふらぁっと入ってみました。

うわぁ〜昔よく食べたなぁ。

小さな容器に入ったスナックラーメン。

爪楊枝に刺さったきな粉棒。

妙な形の、真みどり色した飲みもの。

ピンク色した水あめ。

などなどなどなど…

ついついかごに入れてしまいました。


これくらいでいいかな?

奥に持っていくと、
着物を着た、おばあちゃんが、
腰を丸めて老眼鏡を掛け、
新聞を読んでまして。


「すいません!」

とたずねると、ゆっくり顔をあげると、


『はいはい…』

とお会計をしてくれた。

すごくゆっくりな手つき。
でもそろばんをはじく指は手馴れてて、
僕も昔やってたことはあったが、
忘れちゃってて。


『200万円です。』

「あははは(笑)じゃあ、はい200万(笑)」

ポケットにあった200円を差し出す。

こういう小粋なジョークも駄菓子屋さんの醍醐味だ。



『足りないよ。』

「え?(笑)」

『200万だって。』

「いやいや、おばあちゃん(笑)」

『200万。199万9800円足りないよ…』

「えぇ…冗談?(笑)」


顔は笑ってない。真顔。


「ちょちょちょ、まって。
これ、どう見ても、200万はおかしい。
いっても200円とかじゃない?
これ、10円でしょ?これが30円…」


『200万円です。』


「いやいやいやいや…」





すると、おばあちゃんの後ろの、

小豆色したのれんから、

黒いスーツを着た黒人がふたり。



ひとりはドレッドヘアー。


もうひとりはスキンヘッド。


ドレッド…
「オキャクサン、ドウシタンデスカ〜?」

スキン…
「コマリマスナ〜、マネー、ハラッテヨ」


さっきまで丸まってた背中がウソのように、
すぅっと立ち上がったおばあちゃん。

『…200万円だよなぁ?』


「…い…やぁ」


『払えねぇんだったら、どうにかしねぇとなぁ…』


おばあちゃんが後ろを向く。

着ていた着物の背中にデカイ刺繍で…


【堕餓死屋】


…手から落ちた、きな粉棒が、

床できな粉を花火のように撒き散らし、

転がって、僕の足元で止まった。


END


2009/11/14 置手紙。
《わたしのためじゃなく、

あなたのために作りました。

もう、一生あなたに作ってあげることはないと思って。

心を込めて作ったのよ。

残さず食べるのよ!



わたしに新しく恋人が出来たら。

もっともっとうまく作ってやるんだから!

あなたの嫌いな玉ねぎも入れて。

もっと美味しくしてやるんだから。



食べ終わったら、ちゃんと綺麗に洗っておいてね。

蛇口、ちゃんとしっかり閉めてよ。

ぽたぽたぽたぽた、

あなたが帰ったあとはいつもそう。



その音ももう聞けなくなると思うと、

なんだか寂しいかもね。



じゃあ、お元気で。ありがとう。


ありがとう。》






見慣れた字でした。

その手紙の最後の「ありがとう」のところが、

少し、にじんでいた。


「ぽたぽたは、どっちだよ…」


ひとりボソッと呟いて、

そっと一口食べてみた。



「しょっぱいよ。いつもより。」


もう来ない、この部屋と、
そして彼女に、

ありがとう。


END
2009/11/13 死んだらば。
いやぁ、先ほど死にまして。


死ねば楽になるだろうっつう、
浅はかな考えでして。


いやいや、バカな考えでした。


死んだあとからもう大変で。


死ぬってすごくめんどくさい事なんですね…。

生きてるうちは知る由もないですからね。



まず、書類を180枚記入させられます。
アンケートみたいなものです。
まぁ…今までの人生、短ければ短いほど、
多いアンケートを書かされます。


どういう仕組みなのかわからないんですが…


もう、同じ質問ばかりなんです…。
なぜこんなこと書かなければいけないのか、
担当の人にも聞いてみたんですが、
「私もよくわからない」とか言い出しやがってですね…
昔からのやり方だ、とか言ってました。


そのあと、全身写真を撮りまして、
体の隅々までパシャリパシャリ。


手型足型、顔型っつうやつも取ります。
石膏で?石膏なのかも良くワカリマセンが、
白くてドロドロした物体で。


あ、あと、歯型も取ります。
これが痛いんだ。


なんか?「同じ人間を作らないため」だとか…


ぼくも良くわかりませんけども…。


あとは、事情聴取みたいなことを、
永遠とさせられます。

何人も何人も交代交代で来るんです。
同じ眼鏡かけたやつらがね。


どうやって生きてきたか?
どんな人と逢ってきたか?
どんな出会いをし、別れをしたか?
何を食べたか?誰と…その…
あれをしたか?…などなど、
もうプライバシーもヘッタクレもありません。
まぁ、死んでますのでね。
そんなものありませんけども。


それが…えっと、
時計の概念がないのでね…
どのくらいさせられたか覚えてませんが、
もんすごく長かったです。


で、反省会です。
今までの人生のダイジェストシーンを、
スライドで流されますが…これが恥ずかしい。

どこでどう撮影してたの?ってシーンが、
山ほど出てきて、
どでかいスクリーンに映され、みんなで見られるんです。


で、見終わると、
自分のどこが悪かったか?
自分で答えを見つけて、
それを作文にする。


とんでもない枚数の原稿用紙を用意されて、
そこに書けって言うんです。
全部マスを埋めろって。


これで全過程終了。
1年ほど?そのくらい掛かった様に思います。
休み無しの作業でした。

それが全部終わったら、
あっという間に次の人生です。

滑り台で流されて…
またこの世に戻される。


いやぁ〜疲れました。
そろそろ僕の流される番。

次こそは、絶対に何があっても長生きします。


最後に皆さんに、ひとつアドバイスを。

道端で1円が落ちてて、
1円だからと言って、見逃したり、
ポケットに入れちゃうと、
作文の原稿用紙が10枚増えます。



ご忠告までに。


では。


END
2009/02/03 どっち?
たまらない。

ロングヘアーのつやっつやの髪、

パッチリ二重、くるりんとしたまつ毛。

ぷるんぷるんの唇。

胸が張り裂けそうなくらい大きい。

それに負けじとヒップも豊満。

体のラインがまるわかりの、

滑らかな生地の赤いワンピース。

そんな美女が、

こちらを向きながら、

するりとそのワンピースを脱ぎ、

あらわになったナイスバディーを、

ゆっさゆさと揺らして、手招きする。

この世の中で一番素晴らしい脱皮である。



その横で、見た目普通のエプロンを着た主婦が、

手を叩いて僕の好きなジャーキーを振り回し、

小さなネズミの人形をチョコチョコ動かしながら、

僕を呼んでいる。





…どっちが飼い主か?

と、さっきから聞かれておりますが、

ほんっとによく思い出せないんです。



あの主婦が着ているエプロン…

はい、確かに見覚えありますし、


あのジャーキーの匂いも、

僕がいつもたべているやつですし…



あのネズミの人形も僕のいつもの遊び相手ですが…




本当に思い出せないんです。



なんで、直感で!

直感で行きます。



自分が飼い主だと思った人の胸に飛び込んでいいっすよね?


僕が決めることですもんね。



いや、決めると言うか、

僕の飼い主のところに行けばいいだけの話ですから。



ね?



ですよね?



はい、決まりましたぁ。



じゃ、いきまぁす。




はぁ!はぁ!!!はぁぁ!!くぅぅん。



END
2009/02/03 星。
「あの星取って」と君が言う。

ずっと遠くの、星指して、

ひときわ輝く、星指して、

「あの星取って」の君が言う。



『しょうがないな』と立ち上がり、

精一杯のジャンプをして、

ずっと遠くの星つかむ。



『はい、あげる』と、手を広げ、

彼女にそっと差し出すが、

僕の手の中は空っぽで。




「なにもないよ?」と彼女が言って、

『取れなかった』と僕が言う。



『毎日毎日ジャンプして、

あの星いつか取れるようになるから』




彼女はニコッと笑ったあと、

僕の空っぽのてのひらを見て、



『取れなくても良い。

取ろうとしてくれたことが嬉しい』



と言って、

僕の空っぽのてのひらに、

ちいさな手を重ねてくれた。




歩き出して、君が言う。

「あの星、取って」と君が言う。

『しょうがないな』と僕が言う。



高く高く、ジャンプする。


END
2008/12/01 トビラ。
ここどうぞ、座っていいですよ。

僕、ひとりですから。




開きませんねぇ。


あなたも、待ってるんですか?

ほぉ。




僕ですか?

いやもう数え切れないくらい待ってますけど。

いっこうに開きません。



開くとは思うんですがね、


なかなかね。






何か食べます?

これどうぞ。おいしいですよ。

待ってるときには、これ。

これ食べると最高です。




開きませんねぇ。



待てますか?



一緒に待ちましょうか。



じゃ、何の話しましょうか?


END
2008/12/01 嘘。
嘘をついた。
たくさんの嘘をついた。
自分にたくさん嘘をついて、
嘘だらけになってしまった。
でもこれが自分。
嘘ではなく、本当の自分。



嘘がつけない。
まったく、嘘がつけない。
自分に嘘がつけず、
真実だらけになってしまった。
でもこれは自分じゃない。
真実ではなく、嘘の自分。



嘘をついたという、
嘘がつけない嘘話。

END
2008/10/29 ゆうきくんと遊ぶ。
「ゆうきくん〜。あそぼ〜!」

返事が無い。
ゆうき君宅。玄関前。
大きな声で叫んでみる。

手で持っていたサッカーボールを置き、
もう一度叫んでみる。今度はもう少し大きな声で。

「ゆうきくん〜!!あそぼ〜!」


無反応。


たしか、今日の昼休みの時間に、
近くの公園でサッカーをしようと、
誘ったはずなんだけど。


ゆうきくんも「やろうやろう!」と、
「じゃあ、家に迎えに来て」と。


ゆうきくんは、昨日転校してきた。
自己紹介の声が物凄く小さかった。
それを見たときに、
「あ、僕が話し掛けないと!」
「友達にならないと!」と直感で思った。


たまたま、僕の隣の席で、
僕の名前もユウタだったので、
「同じユウだね。」と声をかけた。


意外と、「そうなんだ!宜しく!」と、
明るい声で返してきてくれた。


そして、僕ととても気が合った。
趣味がサッカー、弟がいる、勉強が嫌い。
すぐ仲良しになった。



どこかに行っているのかな?
今日ゆうきくんに書いてもらった地図では、
この家で間違いないのだけれど。

「ゆうきく〜〜〜ん!!」


玄関のノブに手をかけて、
回してみ見ると、鍵はかかっていないようだった。


恐る恐る玄関を開けてみると、
玄関に、ゆうきくんと、弟、
その後ろに母親と父親が立っていて、
そのもっと後ろにおじいちゃんの姿も。
合計5人。みんな直立不動でこっちを見ている。
ふとももにぴったり手をくっつけて、真っ直ぐ立っている。



さっきからここにずーっといたのか?
ぼくの「ゆうきくん、あそぼ」を聞いていたのか?

僕は、
「あの、ゆうきくんと、遊びたいんですが…」
と、恐る恐る言う。


お母親が手元に持っていたスイッチを、
ゆっくりとした動作で押す。



すると玄関のあちこちに着いているスピーカーから、



「ごぉうかぁ〜〜〜〜く!!!」



僕はビックリして、耳を押さえる。
玄関中がゴワンゴワン言っている。



その声が鳴り止むと、僕は、
「な、なんですか?」と聞く。



父親が「…合格」と、小声で言う。



それをきっかけに、
ゆうきくん以外の4人は
それぞれの部屋にさささっと引っ込んだ。


ゆうきくんが言う。
「よかったね、出たよ!僕の友達として合格!」と言った。


僕は言う、
「合格。…よかった」


僕はもう一言、
「これ、不合格になった人いるの?」

ゆうきくんは言う。
「いないね。大体合格だね。失礼でしょ?
いきなり不合格にするのは。」


僕は言う。
「じゃあ、そのシステムいる?」


ゆうきくんは言う。
「え!?いらない?」

END



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