【新話】

2008/01/26 水。
するめに、水を与えると、

見る見るうちに、透明な乳白色に変わり、

ペタンコな体が、ふっくらと膨らみだし、

海の中にいるように、ゆらゆらと泳ぎだした。





割り箸に、水を与えると、

むくむくと太くなり、

床に落ちると、そこから根が広がり、

枝が生え、葉っぱが生え、

実がなり、大きな大木になり風に揺れた。






ひとつまみの塩に、水を与えると、

そこから小さな波が現れて、

あっという間に大きな大きな海になった。








目が覚めて、ソファーの上。


エアコンをつけっぱなしだったのだろうか?


喉が干からびていて痛かった。





冷蔵庫から冷たい水を取り出して、



体に流し込んだ。








胸に手を当てる。







…。






「乾いたままだな…」




もう一口、もう一口。



END



2008/01/25 輪ゴムの橋。
輪ゴムを、

右手の人差し指と、

左手の人差し指で、

ぐーっと伸ばして伸ばして、

ピーンと張った橋を作る。




その橋を、

頭に輪ゴムで出来たターバンを巻いた小さい男たちが、

輪ゴムをはじいたときに出るような音のような歌を、

大合唱しながら進む。まっすぐ進む。




橋の向こう岸から、

ピンクの輪ゴムを肩から掛けた小さな女たちが、

輪ゴムをねじったときに出る音のような歌を、

大合唱しながら現れた。





橋の上で、にらみ合う両者。



はじいた音とねじれた音。





右手の人差し指のほうに、力が入りすぎ、


橋はプチンと音を立てて、切れてしまった。





あっという間にその輪ゴムは、

どこか分からないところに飛んでいってしまった。






ああ、また結末が見れなかった。


また新しい輪ゴムを買いに行こう。





僕はベルト代わりの緑の輪ゴムを閉めなおし、


橋を渡った。


END


2008/01/25 おとしもの。
道端でおじいさんが、


ポケットをまさぐり、


何かを探しているようです。




その探し物は、


なかなか出てこない様子で、


おじいさんもだんだん悲しい表情になって、


必死にポケットをまさぐっています。






どこかに落としたのだろうか?




誰かに取られたのだろうか?





後ろから、おばあさんが近づき、


おじいさんの肩をそっと触り、


何かささやきました。





するとおじいさんは、


ほっとした表情で、


おばあさんと手をつないで、


歩き始めました。






そのふたりを見えなくなるまで眺めたあと、


自分のコートのポケットに手を入れて、


なにか、それを、落とさないように歩き出しました。


END

2007/12/04 なんつうの?
なんて言っていいかわからないけどさ…


とにかく、あったかいんだ。


こう…ぽかぽかと言うか、


ほかほかというか、うん。


たまにね、蒸気が出るみたいに、


熱くなるときもあるのよ。


なんて言えばいいかね、


自然と笑顔になると言うか、


わっはっはとまでは行かないよ?


そりゃ、悩むこともなるしね、


改善していかなければいけないことも、


たぁんとあるけれどもね、


そんなことはまず抜きにして…


とにかく、…その、


まぁ、楽しい。い?


うん、楽しいの。


こんな感じで、今のところは、


良いんではないかね?


まぁ、他人になんと言われようがさ、


楽しいければいいでしょ。


自分の、自分なんだから。


おう。


END
2007/12/04 黄色いおじさん。
今日、上司に怒られました。


この歳になって、怒られるのって…


ほんとグサッと来るものがあります。


出てけ!と言われましたのでね、


お昼過ぎなのに、会社から出てきちゃいました。



会社の前を通る道路を、渡った向こう側に、


黄色いおじさんが立ってます。こっちを見ています。






夕方まで公園でブラブラし、


コンビニで買った、サンドウィッチを、


舌を使わず、歯だけで食べる感じ。


空気を見て、何も考えず飲み込む。


何やってるんだろう。


向かいのベンチに、黄色いおじさん。


こっちを見ている。







飲み屋に立ち寄り、


飲めもしない、熱燗を頼み、


まぐろのお刺身と一緒に流し込む。


体は温まるが、心は冷え切ったまま。


僕の3つ隣の席に黄色いおじさん。


こちらを見ながら、熱燗をすする。






家に帰り、スーツのままベッドに倒れこむ。


ネクタイを緩める。


ゴロッと体勢を変え、リモコンでテレビをつける。


交通事故のニュース。


ごった返してる野次馬。


みんな事故現場を覗き見ようと群がっている。


その中に黄色いおじさんが。こちらを見ている。







その黄色いおじさんの顔が、アップで映る。



「…黄色いなぁ…」



END
2007/12/04 何回目。

こんにちは、こんばんわ。


何回言ってきたんだろう?


これから何回言うんだろう?


これから何人の人に出会うんだろう?


好き、嫌い。何回思うんだろう。


初めまして。何回頭を下げるかな?


さようなら。何回涙をこぼすかな?


こんな感じになれることって、


あと何回あるだろう?


この人生、今何回目ですか?


END
2007/10/25 ビリンビリン。
14月24日。


今日はビリンビリンデー。






毎年も始まる、ビリンビリンパーティーだ。



家族が全員、食卓に並び、



大きなロウソクをテーブルの真ん中において、



小さなフォークを利き手じゃないほうで持ち、



こんがり焼いた「ビリンビリン鶏」を頬張る。








お腹一杯になったあとは、




お父さんがビリンビリンの格好をして登場。



(みんなそれが、お父さんだってことは知っているけど、

それは、暗黙の了解で)




ビリンビリンにつかまったら、



次の年には、「骨が弱くなる」という言い伝えがある。



家族みんなで、紫のマシュマロをビリンビリンに投げつけ、




追っ払うのだ。








追っ払ったあとは、自分の歳の数だけ、



マシュマロを口の中に入れてモグモグしては、玄関の外へと吐き出す。






子供は寝る時間。





子供が寝たあと、ビリンビリンはこっそりと、



枕元に登場するのだ。







そして、子供たちの枕元に「枕」を置いて帰るのだ。






これが14月24日、



ビリンビリンデー。





end
2007/10/25 
暑いときには仰いでほしい。


寒いときには暖めて。


遠いときには、走ってきてね。


近いときには、くっついて。


暗いときには、照らしてほしい。


眩しすぎたら、日陰をつくって。


降りたくなったら、手を貸して。


高いところは、肩車。





笑いたいとき、笑わせて。



泣きたいときは、一人だなぁ。





END
2007/10/11 いろ。
白いお花に囲まれた、


青いおうちにおりますよ。


赤いカーテン揺れている。


黄色い大きなマグカップ。


緑色したコーヒーを、


オレンジ色のスプーンで、


くるくるくるくる、かきまぜる。



END




2007/10/11 小さい私たち。
小さい私たちなんですよ。



そんな大きなもの持って、どうするつもりですか?


小さいものから、少しずつ、てくてくいきましょうよ。



小さい私たちなんですから。



小さく笑って、小さく泣いて、



小さく小さく。





END



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